アルカディアの聖域~第一章前編~アルカディアの聖域第1話~Lost memories 前編~ いつからだろう、この町が活気にあふれ出したのは・・・・・・。 王国の崩壊から5年余り、各地の街はそれぞれ”自治体”という機関を作った。 冒険者 討伐隊 聖職者 監察官 商人 最初の頃は人々が実権を巡り騒動が起きたが、今となっては昔の話だ。 この町の自治体は、主に商人と討伐隊。 仕事の内容は、討伐隊が街に現れたモンスターを狩り、商人はそのモンスターの皮 牙 爪 体液 などを売りにゆく。 私がいるこの砂漠都市アリアン。 気温が高く、貧弱な者はすぐに日射病や脱水症状を起こしてしまう。 平均気温は30℃前後。 季節が変わると肌が焼ける様な暑さに変わるのだ。 そしてこの地方のモンスターは、薬や武具の生成に役立つ物を持っている。 たとえば、フェイズスパイダーの体液は解熱剤に レッドシーフの皮は主に革製の防具の生成に。 デスピンサーの牙は解毒作用などの効果を持っている。 この街では、必要な物は全て利用するのだ。 かくゆう私も討伐隊。 てか、何でも屋だね。 依頼などを受けて、お金をもらってる。 まぁ、依頼が来ない日はこうして商人やってるんだけど。 街のはずれにある空き家を使って、厳しい生活中デス。 アリアンの広場には様々な露店が並んでいた。 果物や野菜、干物などの食物類。 剣や槍、盾や防具などの武器、防具。 主に冒険者や住民、他の街からも商品の売り買いのため立ち寄る。 人が行き交う中で、私は熱い地面に絨毯を引いて座っていた。 「お尻・・・・・・ 熱いなぁ・・・・・・」 そうなのだ。 照りつける太陽、焼ける地面、萌え立つ蜃気楼。 違う、燃えだ(汗 これほど人間の力を奪う環境はそうそう無いだろう。 私は、自分の頭にローブをかぶせ、手をパタパタやりながら座っていた。 辺りをせわしなく歩く人たちを見つめながら、私は足下の商品を見る。 露店の商品は全部で4個。 革製鎧が二個、ミスリル製の鎧に 盾 防具の横に手書きのプレートが置いてあり、そこに値段が記されている。 革製の防具は、昔鉱山都市ハノブにいる友人からもらった物だ。 ミスリル製の鎧と盾は、以前依頼を受けたときの報酬。 質は良いはずなのになぜか売れない。 「何で売れにゃいのかにゃ~」 私はため息を吐きながらそう言った。 どうも暑さで頭がやられ気味だ。 語尾にそれ系の人が好きそうな言葉を付けてしまった。 ふと辺りを見渡すと、一人の男性がこっちをじっと見つめていた。 男性は立ち止まりなにやら考えると、今度ははこっちに歩いてきた。 私はこう言った。 「安いっすよ~ 買ってぇ~」 もはや愛想もなにもあったもんじゃない。 こっちは熱いんだ才オォ(。゜Д゜)ォオ才 「いや、買わないけどね」 ハイ来たー 買わない宣言ー。 あれか。 新手のいじめか。 王国はこんな時まで私達を苦しめる気かぁ!!(違 「俺が誰だか、気付かないか?」 男性は声のトーンを少し上げて語りかけてくる。 唐突な言葉に吃驚した。 私は言葉もなく、何か言おうと考えた。 「えっと・・・・・・」 「うむ」 男性はうなずく。 どう言えばいいのだろう・・・・・・ 私はこの剣士のことを知らないし。 あ。 あれか! 私は思いついた言葉を率直に要訳して言った。 「サイコさん?」 ・・・・・・ むう ・・・・・・違ったようだ。 明らかに!Σ( ̄ロ ̄lll)って顔してるし 悪い事したかな・・・・・・。 すると彼はため息をついて、重たい武具を一個一個はずしていく。 彼の容貌の描写でもするか。 暇だし。 体は紺色の甲冑鎧に、頭には顔まで隠す兜。 靴はくるぶしまでを覆う長さの鉄製のロングブーツ。 大きな剣は背中にしょっている。 盾を左手に持ち、腰の左側にもう一本の剣がぶら下げてある。 首には、騎士の象徴である聖騎士の勲章がかけてあった。 おもしろいことに腕には何も付けていない。 暑そう・・・・・・ 見ているだけで汗が・・・・・・ ううう・・・・・・。 彼はまず鎧を脱ぎ、次に兜を取った。 マッチョまではいかないが、鍛えられた筋肉。 傷跡が目立つ体だ。 きっと数々の戦場で名声を上げてきたのだろう 顔は静観な顔立ちで、やや童顔。 目の色は茶色 髪型はショート、色は赤茶。 そして、私の顔を見ると ニカッ と笑って見せた。 「・・・・・・」 私は、引いた。 「ええええ、思い出してくれよ・・・・・・」 彼は心底恥ずかしそうに言った。 おもしろいからこのまま夜までやってようかなぁ・・・・・・(笑 「あ、ハースさん」 後ろから子供の声が聞こえた。 振り返ると紙袋を持った少年が立っている。 「ああ~ お帰り~」 「お帰り、フロワード」 フロワードと呼ばれた少年は、私の横に座った。 「アイさん、全部売れて・・・・・・ 無いですね・・・・・・」 目の前にある防具を見てため息を漏らす。 「仕方ないでしょうが、売り子は苦手なの~」 私は頬をふくらませてフロに抗議した。 フロは苦笑して、「頼まれた物持ってきましたよ」と言った。 持っていた紙袋を私の横に置く。 紙袋の中身は、アリアン特製のフルーツジュース。 砂漠の数少ない濃厚なフルーツを手当たり次第に混ぜて、強引に飲み物にしたのだ。 「才オォ(。゜Д゜)ォオ才 でかしたぁ!!」 私は早速そのジュースを飲み干す。 「うはぁ・・・・・・」 「んんん~」 口の中にさわやかな甘みと濃厚な果汁が流れ込む。 フロはこのジュースが苦手らしく、進んで飲もうとはしない。 あまりに気温が高くて水もない時に飲むらしい。 「フロ、変わりないか?」 剣士がフロに話しかける。 「あんまり無いですね、依頼も来ません」 フロは屈託のない笑顔で言う。 「そうか、冒険の話でもしようかと思っててな」 「あ、聞かせて欲しいですw」 「んじゃあ、この前の古都の依頼から話すか・・・・・・」 フロは目を輝かせて聞いている。 よっぽど外の世界に憧れているのだろう。 ・・・・・・なんか、複雑な気分だにゃ~。 顔は幼く(当たり前なのだが)髪は後ろでとめている。 このクソ熱いのにコートを羽織り、中には半袖のシャツと革製のズボン。 目の色は黒 髪の色は茶色。 知り合ったのは、私が砂漠都市アリアンに来てから間もないころ。 そのころは依頼もなく、モンスターを狩って生計を立ててた。 砂漠のど真ん中で倒れていたのが、横に座って男性としゃべっているこの少年。 はじめは私にも口をきいてくれなくて困ったよ・・・・・・ 1週間くらいたったら、急に元気になり始めて。 自分は魔法都市スマグから来たこと、親はいなく年の離れた姉がいること。 盗賊に襲われて必死で逃げてきたら、力尽きて途中で倒れたことなどを話してくれた。 そして私達は、この街で生き抜いていくために討伐隊を いや、何でも屋を開業したのだ。 通常ウィザードは、杖を使う。 フロの場合は魔導銃を携帯している。 これは魔術で作られたスマグの産物であり、最近作られた物なのだ。 WIZは杖を好むが、フロはこっちの方が勝手が良いらしい。 二人は一通りの会話を終えたらしく、こっちに向き直る。 「フロも言ってやってくれよ・・・・・・」 剣士が泣きそうな声でフロワードにしがみつく。 うーあ。 いかにも暑苦しそうな光景だ・・・・・・。 気温が2、3℃上がったんじゃないかな・・・・・・。 フロワードは苦しそうにに身をよじらせ、私にこう言った。 「アイさん・・・・・・ 物忘れ激しすぎですよ・・・・・・」 うーあ これは効いた。 剣士はこっちをじとーっと見ている。 地味にムカツキマスネ。 アイちゃんキレマスヨ? 「この前の剣士さんじゃないですか ほら砂漠の蠍事件。」 フロワードは人差し指を上に向けてそう言った。 アイははっと脳裏に浮かんだ画像をスローで再生した。 回想 砂漠の蠍事件 アリアン地方に生息するデスピンサーが、産卵の時期になると他の生物を襲い自分の養分にするのだ。 しかも、近くにいる生物なら何でも襲うとゆう。 その狩りの方法は、蠍が上空より飛来し尾の先端にある針で獲物を刺し麻痺させる。 その間に自分の巣穴に持ち帰り、骨まで綺麗に貪り食うのだ。 私達二人がアリアンに来て間もない頃、砂漠を旅しているときに出会ったのがこの剣士。 名前は「ハース」 古都ブルンネンシュティグでは結構名の知れた凄腕の剣士らしい。 出会ったのは、私が 蠍に襲われそうになってたとき。 まるで白馬の王子様のように(古)次々と蠍を倒していった。 ハースとアリアンで物件を探し、住むようになった。 その剣士とは二日後に別れたから、丁度2ヶ月前か・・・・・・。 ちなみに私とフロが蠍の牙を死体から取っていったのは言うまでもない。 そのおかげでアリアンで何でも屋を開くことが出来たんだっけ・・・・・・。 生活が厳しいこの街では、多少修羅場をくぐらないとやっていけないのだ。 回想終了 「久しぶりだねぇ~」 アイは笑顔でそう言った。 「二人とも元気そうで何よりだよ」 やれやれといった感じでハースが言う。 「で、今日はどうしたんですか?」 フロワードが聞く。 「ああ、 新技を考えたんだw」 アイ&フロ「お~~~~~~」 イイネ、ミタイネ。 「それで・・・ その、 二人に見てもらいたくて・・・・・・」 ハースは恥ずかしそうに地面を見ながらそう言った。 何で恥ずかしがるのかが疑問だが、私達は余興は好きな方なのだw 「見たい見たいw」 「僕もですw」 ハースはうれしそうに剣を手に取る。 「うっしゃw それじゃあいくぞ~?w」 アイ&フロ「お~~~!!」 私達は手をグーにして賛同の意を表した。 ハースはまず、剣を右手の人差し指の先に乗せる。 そして左手で勢いよく回す! すると剣は風をまとい、くるくる回り出した。 フォォォ という音と共に、剣は地面に垂直で回っている。 時間がたつとにつれ、徐々に速度を増していく。 「うはぁ・・・・・・」 「すごい・・・・・・」 褒められて嬉しいのか、ハースはさらに剣の速度を上げていく。 「行くぜ! シューティングスター!!」 剣をとん と軽く押す。 すると空気中が細かく震えだした。 空中にある剣を、回し蹴りで力強く蹴った! 刹那 剣は空気を切り裂き、ものすごい早さで飛んでいく。 ハースは向き直り、 「どうだ?」 といかにも自慢げに言う。 「すごいですよ!! さすがハースさんです!!」 フロが手を叩いて褒め称える。 ハースは嬉しいのか、いやぁw とか言いながらクネクネしてる。 「いや、あれ・・・・・・!」 アイは飛んでいった剣の先を指さした。 フロとハースが振り向く。 剣は地面に落ちていた・・・・・・。 そして 3匹のフェイズスパイダーが広場を徘徊していた! 「!!」 「まじかよ・・・・・・!」 蜘蛛はこちらに気付くと、一気に襲いかかってきた。 「フロ、援護! ハースは剣を!!」 「はい!!」 「了解!!」 アイが叫んだ刹那、一匹の蜘蛛がフロに襲いかかってきた。 「水の加護を仲間に与えたまえ!」 アイが詠唱を始める。 アイテールのジョブであるサマナーは、自然の精霊を自由に操る能力を持つ。 炎、水、風、土の力を味方につけ、仲間を守り敵を殲滅するのだ。 「おいで・・・・・・ スウェルファー!!」 アイが強く叫ぶ、 地面から水の蒸気が生じその中から魚のような召還獣が姿を現した。 「エクスパンション!」 蜘蛛の攻撃がはじかれる! よく見るとフロの回りには薄い皮膜が張っており、かすかにトゲが立っていた。 「アイさん、もう一匹を。」 フロが詠唱を始める。 アイはうなずき、もう片方の蜘蛛を見つめる。 通常、フロのようなウィザードは敵の前では滅多に詠唱はしない。 WIZ自体防御がもろいので、戦いの中では主に後衛なのだ。 しかし、仲間の支援系のスキルを得た場合は別である。 驚くほど性格に、高等スキルを発動できるのだ!! 「チリングタッチ!」 構えた魔導銃から冷気と共に弾丸が発射される! 最大限の冷気を保ち、触れる物を絶氷の柱にしてしまう魔術だ。 みるみるうちに目の前の蜘蛛はに凍りつき、動かなくなった。 それを見届けたアイは、もう一匹に集中する。 「スウェルファー、お願いね~」 スウェルファーの背中をぱんぱん叩く。 『解った~』 スウェルファーが答える。 アイはすう・・・っと息を吸い込む。 「風の中に転機を見いだせ、嵐の中に勝利を見いだせ!!」 声に力が入る。 スウェルファーが蜘蛛と戦っているのを見計らい、アイは他の召還獣を呼び出す。 だが、蜘蛛の方が早かった。 「ちぃ!!」 襲いかかる蜘蛛を、アイは土台にし 飛んだ!! 蜘蛛は不意をつかれてよろめく。 「おいで! ウィンディ!!」 空中で魔法陣が現れる。 中から光と共に、風を纏った軟体動物のような召還獣が現れた。 「風を味方に! 第一の門を開け!!」 アイが鋭く叫ぶと、ウィンディが風に包まれる。 「アイさん!!」 落ちてゆくアイをフロが受け止めようと走る。 アイは、親指を立てた。 「リフトアップ!」 虚空を指さし、体を風に任せた。 「あぶない!!」 フロが叫ぶ。 その瞬間、ウィンディを包んでいた風がやむ。 するとアイを追う様に、一匹の鳥が素早く空中を旋回。 その姿はまるで風の化身の様だった。 アイを背中に乗せたまますう・・・っと地上に降りる。 「ありがと」 アイが鳥に礼を言う 『無茶しないでね?』 鳥は柔らかな声で返事を返した。 鷹の様な爪を持ち、眼孔は鋭い。 「アイさん・・・・・・ これは・・・・・・?」 フロは驚きを隠せない様子で鳥を見つめる。 「ウインディの第一解放形態っす」 アイが言う。 『どうもはじめまして』 ウインディが握手を求めるかの様に前足を曲げた。 「ど、どうも・・・・・・」 フロは怖々前足を握り返す。 アイは身構えた蜘蛛を見据えた。 「いくよ、ウィンディ!」 『はい!』 ウインディはアイを背中に乗せて空中へ移動。 「ウインディ! そのまま敵の上空へ!! スウェルファーは戻りなさい!! フロはもう一匹を、ハース!! 剣はまだなの!!?」 まるで司令官の様に次々と命令を出す。 スウェルファーは蒸気となり姿を消し、ウィンディは空を目指して滑空する。 フロは詠唱を始め、ハースは・・・・・・・ 「うおおおおい!!」 鎧をせっせと着ていた。 「ご、ごめん なんかやりずらくって・・・・・・」 申し訳なさそうにぺこり。 「ああもう! 早くしなさい!!」 ウィンディに乗りながらアイが一括。 「・・・・・・すいません」 もう一回ぺこり。 「アイさん、準備OKです!!」 フロが魔法の充填を終えて、いつでも発射できる状態にする。 「解った、じゃあヘイストお願い」 「了解です!」 銃を機動させフロは空を見つめ、魔導銃の引き金を引いた! 「ウィンディ、ちょっち痛いけど我慢してね~」 アイが苦笑しながら言う。 『解ったよ』 襲いかかる弾丸に恐れの色を見せない。 さすがあたしの召還獣だねw そして弾丸がウィンディの体を直撃。 爆炎と共にウィンディの体が煙に包まれる。 『マスター、良い感じだよ』 ウィンディが感想を漏らす。 ハースは鎧を着終えて、最後の一匹の方に走り出した。 「うっし ウィンディ! ワインディングクロー!!」 アイが命令すると、ものすごい速度で地上へと下降。 そして鋭くとがった爪で蜘蛛を切り裂く! 蜘蛛はうめき声を上げて後退。 アイは地上に降り立つ。 そして、 座った。 「!Σ( ̄ロ ̄lll)」 フロが驚愕の表情を作る。 「アイさん! やられますよ!!」 手をばたばたしながら遠くの方で叫んでる。 アイはそれに答えるかの様に叫んだ。 「ハース!」 アイは微笑しながら振り向く。 すると、アイの後方から剣が飛んできた! 「うおおう!」 フロが驚いて変な声を出した。 アイはフロの方を向いてVサイン。 にっかり笑いのオプション付きだ。 剣はそのまま正確に蜘蛛の体を貫く。 蜘蛛は断末魔の叫び声を上げて、やがて動かなくなった。 緑色の体液が地面にしみ出した。 あとで掃除しないとね・・・・・・。 「待たせてすまない」 蜘蛛から剣を引き抜き、申し訳なさそうに言った。 アイは 「いやぁ、たまにはこうゆうのも良いもんだよw」 と笑いながら答える。 「フロ、驚かせて悪かったな」 ハースは片手を上げ、苦笑ながら言った。 フロはまだ心臓がマラソン中のため、壁に手をついて落ち着きを取り戻そうとしている。 よほど吃驚したんだろうなぁ・・・・・・。 「ふむ・・・・・・」 ハースが何か考えている。 「どうかしたの?」 アイは怪訝そうに聞く。 「いや、何で街に蜘蛛が現れたんだろうと思って・・・・・・」 「ハースが剣投げたからじゃね?」 不敵な笑みを浮かべて言う。 「いあ、仮にそうだとしてもだ」 ハースは言う。 「通常、アリアンは砂漠の端にあるだろ? ガディウス大砂漠の」 アイは頷く。 フロも落ち着いたのか会話に混ざってくる。 「ええっと、蜘蛛が街に来るなら アリアンじゃなくて・・・・・・」 う~ と呻く。 「リンケン?」 アイが助け船を出す。 フロは頬を赤らめながらそれです!と言った。 考えに考え、沈黙が私達を包み込む 「なぜ砂漠の端にあるアリアンに蜘蛛が来たのか、一つ心当たりがあるんだ」 ハースが切り出した。 意味深な顔をして二人を見つめる。 「夜にでもアリアンの酒場に来てくれ それじゃあな」 「ああ、ちょ ちょっとまってよ~」 ハースは無視して去っていった。 フロはアイの腕を握る。 「嫌な予感がするんです・・・・・・ 胸騒ぎとゆうか、なんか嫌な感じです」 フロは震えているのか、ぎゅっと身を寄せてくる。 一体何が起きてるのか、私にも解らなかった・・・・・・。 アリアンは元の喧噪を取り戻した。 私達は広場の蜘蛛の死骸を掃除して、夜になるまで露店を続けていた。 私達は、何か巨大な力が街を包んでるかの様に感じられた・・・・・・ 同時刻 アリアン広場の露店 二人の人物がアイとフロを遠くから見つめていた。 「任務失敗か・・・・・・」 一人の大柄の男がつぶやく。 「仕方がありません、相手は“楽園の使者”ですから」 横に立っていた女が言った。 体にマントを羽織り、顔はよく見えない。 「ふっ 一応俺たちもそうなんだけどな」 手にはオーブの様な宝石を持ち、この男もマントを羽織っていた。 「力を使わないからでしょうか? あの二人からは聖域の息吹が感じられません」 女が呻く様につぶやく。 「まあそう言うな、イクィ」 「はい・・・・・・」 イクィと呼ばれた女は、槍を片手に歩き出す。 「マスター、行きましょう」 女はは振り向いて、淡々としゃべる 「まあここにいても始まらないな。 一端ハノブに戻るか」 「御意」 大柄の男は、虚空にオーブを掲げ、詠唱を始めた。 「我が名はTogusa 蒼炎を司る者なり・・・・・・」 イクィが真似する様に言う 「我が名はイクィ 宵闇を纏いし者なり・・・・・・」 刹那、二人の体を光が包み込む。 徐々にその光りは増していき、二人は忽然と姿を消した・・・・・・ ~おまけ話~ フロの日記 「7月10日 天気(晴天) 今日はアイさんと砂漠で蠍の牙を取ってきました。 途中で蜘蛛に襲われたんですけど、アイさんの召還獣のおかげで助かりました。 ハナブさんはいつも僕達の戦利品を高額で買い取ってくれます。 今日も余り品質はよくないのに、蠍の牙を10万ゴールドで買い取ってくれました。 おまけに今日のおかずもいろいろくれました。 アイさんが料理したんですけど アイさん お願いですからアリアンジュースはやめて下さい。 僕、あれ大嫌いなんです・・・・・・ 今日は疲れたので寝ます お休みなさい」 アイの日記 「7月15日 天気(これでもかって言うくらい晴天) 今日はフロと酒場に行って依頼受け~ 内容は砂漠に出没した蠍の退治。 あれ苦手なんだよね・・・・・・ すばしっこいし。 砂漠に行く途中に蠍のえさを買ってきたんだけど、あんまり役に立たなかった。 どうにか倒したけど ちゅかれたぁ!! さすらいの剣士様に助けてもらって感謝感激雨霰だねw 名前はハース。 今書いている場所も、ハースがくれたの。 あとでおかえししないとね 今日はもう寝よっと また明日~」 ・・・・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ 「ふう」 アイは机の上にある本を閉じた。 表紙にはアイの日記と書かれてある。 それは古ぼけた、小さな本だった。 アイはペンをしまい机の横の本棚に日記を戻す。 「おああ!!」 椅子に座りながら本棚へと手を伸ばしたので、日記を戻したあとに体勢を崩してしまったのだ。 椅子ごと床に落下。 ダメージ(精神的&やる気)80%減。 「イタヒ・・・・・・」 床に寝そべりながらぼそりとつぶやく 頭を強打したのだ。 痛いはずである。 すると、ドアが控えめにノックされる。 「どうぞ~」 アイはいかにもやる気のないように返事をした。 ドアが開き、ノックした人物が部屋に入ってくる 「アイさん、僕もう寝ますね って なにしてるんですか・・・・・・」 入ってきたのは、子供の魔術師だった。 髪を後ろで縛り顔立ちはやや幼い(当たり前)印象を受ける。 服は上がシャツに下は半ズボン。 手には枕を持っていて、眠たいのか目がしょぼしょぼしている。 アイは立ち上がり、椅子を元の位置に戻す。 「フロちゃん」 とフロへ向き直り言う。 「な、なんですか?」 アイの真剣な目に、フロが少し驚く。 「・・・・・・・・・・・・・・・あたしと寝たいの?」 真剣にそう言った。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんなわけないでしょう?」 真剣にフロも言い返す。 「べっと ヒトツシカナイデスヨ?」 アイが言う。 「!Σ( ̄ロ ̄lll)」 フロが驚愕の表情を作る。 実はアイ達が住んでいる家には、家具という者が全く無い。 竈はおろか、寝具や箪笥などは一個しかないのだ。 「覚悟、決めなさい」 そう言うとアイは上着を脱いでシャツ姿になる。 ベットに潜り込み、掛け布団の端を持ち上げて 「ん」 とフロを促す。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 フロは動かない。 「ん」 アイがせかす 「・・・・・・・・・・・うう」 フロは呻くが、ベットに入ろうとはしない。 「ん~」 アイは掛け布団の端をパタパタ上下に動かして 「あったかいよ?」 そう言った。 「はい・・・・・・」 フロは睡魔に負けてベットに潜ってくる。 アリアンの夜は長い。 窓から見える夜空は幻想的で、どこか寂しい風景だった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ どれくらいそうしていたのだろう。 横で寝ているフロは、すやすやと寝息を立てている。 アイはなぜか眠れず、フロの寝息と共にアリアンの夜空を眺めていた。 眠たい。 でも何故か寝付けない。 するとフロが苦しそうに呻き出す。 アイはフロの顔をのぞく。 フロの枕が、濡れていた。 よだれではない。 その滴は目から流れていた。 「お姉ちゃん・・・・・・」 ぽつりと フロは寝言を言う。 その声は、震えていた。 アイは黙っている。 「僕を・・・ 僕を一人にしないで・・・・・・」 フロは悲しそうに呻く。 肩を細かく振るわせ、しゃくり上げながら言う。 「フロ・・・」 アイは、横に寝ている少年を抱き寄せた。 自然と少年をいとおしいと感じた。 「安心して・・・ あたしがいるから」 優しく、そうつぶやく。 フロはアイの胸の中で泣いている。 やがて、またすやすやと寝息を立て始めた。 「おやすみ・・・・・・ フロワード・・・・・・」 アイは胸の中の少年のおでこにキスをして、静かに、言った。 アリアンの夜空は寂しげな風景から、全てを包み込む様ないとおしさに包まれていた。 星達は輝きを増し、月は神々しく浮かんでいる。 「おやすみ・・・・・・」 胸の中の少年にそう言って、アイは眠りについた・・・・・・・ ジャンル別一覧
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